吉野Neomuseumの旅

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2013/12/7~8にかけて吉野Neomuseumの旅に行ってきました。
「playfulLearning」などの著者であり、先進的な学びを研究する上田信行先生のもとで、

「play」とは何か?ということをディスカッションしたり、ドローイングしたりしながら、
「play」を誘発するオブジェクトのプロトタイプの制作をしました。
1つのオブジェクトを制作するのに、対話をしたり、ドローイングをしたりしながら、少しづつ「play」という概念を形に起こしていく作業はすごく面白いものでした。

「play」について対話をする中で印象的だったのが、今世の中で起こっていることのどこに「play」があるか、どこに「play」を取り入れたら面白いのかということが、そこにいる人の経験や思考をトリガーにしてどんどん広がっていったこと。それに対して「play engineering」「strategic play」「play forward」などと「名付け」ながら、言葉遊びをしていたのが印象的でした。

「名付ける」という行為は、最近すごく面白い行為だなと思っていて、何かに対して名付けることで、その人の、その場の解釈が名前をもって定着する。一度定着すると、そこが原点になって、再び色々な人の解釈によって広がっていく。その循環を生むのが「名付ける」っていう行為の効能なのかなーと思ったりしました。名付け方とか言葉選びっていうのは、すごくセンスが必要な部分で、そこをplayできるっていうのは流石の上田先生。すごくうまかったです。

「その場の音、音楽を議事録にしたらどうか?匂いが議事録に残せたらどうか?」
「戦略をもっと3Dで捉えるために、レゴを使って戦略mtgをしたらどうか?」
「もっと立体的に、フィジカルに仕事をしていったほうがいいんじゃないか。」
「playを誘発するオブジェクトってどういうもの?」

そんなアイディアとか問いかけが、どんどん出てくるような対話時間でした。いろいろ話は派生していっているのに、それが緩やかに有機的なつながりを持っている感覚がありました。

もう1つ印象的だったのが、ネオミュージアム空間です。
ネオミュージアムの建物はコンクリートの3階建ての建物で、それぞれの階に意味があります。
1階が経験、アクティビティーのフロア。2階がそれを俯瞰してみて、その活動の構造を捉えて構造化、モデル化するフロア。3階がモデル化されたものに意味付けをし、セオリーに昇華していくフロア。それぞれの階ごとに、空間が変化し、人のマインドセットが変わるように設計されています。これは「play play play」と言うように「ものごと」を三層構造で捉えると、そこに柔軟性と深みが出てくるという、上田先生の考えをそのまま表しているようにも感じました。実際に、空間移動をしていくことで、全員が行動を無意識に変えているということを3階に移動したときにはっきりと感じ取ることができました。

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印象的なこと、これから発展していきそうな言葉、概念が1日で大量に入ってきて、まだ消化しきれていない部分がありますが、これから先アウトプットしながら定着させていきたいと思います。アウトプットの過程を手助けする考えとして今回頂いたのは、
『「ものごとを3層構造で捉えてみること」で断片的な思考を1つのツールに仕立て上げること』
だと感じています。

上田先生の考え方は、驚くほどに今の時代を先導するような考え方だし、プレイヤーの人たちとどんどん議論して、それぞれがその議論の中から発見を持ち帰ることができるものでした。私自身も、デザインっていうものに仕事で関わり始めて5年間経って、コミュニティーであったり、体験をデザインすることが面白いと思うようになったところでの出会いだったので、上田先生の研究と実践には色々な気づきをもらったと思います。

「先見の明がある」と良く言われることがあります。昔はなんとなくそれがその人の生まれもっての才能だったり、生まれもっての勘の鋭さみたいなものな気がしていたけど、そうではないと最近は思います。「先見の明」っていうのは、ひたすらにその時代を、その時代の人をあらゆる角度から観察をして、探求をしていくことで身につけられるものなのだなぁと。梅棹忠夫の展示を見たときも思ったのだけれど、上田先生もまさにそう。時代を、人を観察しながら、創造的な学びという分野で、ひたすらに探求を続けてきたからこそ、ハッとするような新しさをもたらしてくれるのだと思います。

【上田信行】
1950年、奈良県生まれ。同志社女子大学現代社会学部現代こども学科教授、ネオミュージアム館長。同志社大学卒業後、『セサミストリート』に触発され、セントラルミシガン大学大学院、ハーバード大学教育大学院で学ぶ。帰国後は『おかあさんといっしょ』(NHKの教育番組)制作に関わるなどした後、現在は教育工学を専門とし、「学習環境デザイン」をテーマに活動中。とくに、自らの研究を実践する「ネオミュージアム」を設立、人と人とが出会い、コミュニケーションをとおして生まれる学びの場として数々のワークショップを開催している。

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